出先でトラブルに遭わないようにするためには、クルマからのSOSを見逃さないことが重要です。例えば、エンジンルーム付近からいつもと違う異音が発生していたら、何らかのトラブルを抱えている証拠。早めにプロに点検してもらえば簡単な整備で済むものの、それを放置しておくとより大きなトラブルに繋がってしまう場合があります。この記事では異音の原因として多いドライブベルトとテンショナーについて解説します。
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目次
ドライブベルトの劣化によりエンジンから異音が発生
ボンネットを開けてエンジン前方を見ると、エンジンの動力を使ってベルトやプーリーが動いているのが分かる。その動力源になっているのがクランクプーリーで、クランクシャフトからの動力をプーリーとベルトを使って、オルタネータやウォーターポンプなどに伝え作動させている。例えば、クランクプーリーからの動力が伝わらなくなれば、発電機の役割を持つオルタネータが正常に作動しなくなり、走行に必要な電力を発電できなくなってしまう。つまり、エンジンが持つ本来の機能を発揮するために必要な補機類を動かすために重要な役割を担っているのが、ベルト回りということなのだ。
動力を繋げる役割を持つベルトは前述したように動力源となるクランクシャフトの回転を利用しており、ドライブベルトと呼ばれている。これには2種類があって、大きな駆動力を必要としないVベルトと、それよりも新しく開発されたポリリブベルトがある。VベルトはV字状になっており、プーリー側も溝を切ってあるので接地面との密着度が高いのが特徴。平らのベルトでは接地面を増やさないと脱輪の可能性もあるため、V字状にすることで安定した回転を実現することができるのだ。ただし、曲げにくいという弱点もあって、小さなプーリーに巻きつけるのには向いていない。それを解決したのが、ポリリブベルト。構造はVベルトと同じなのだが、V字の山を低く、そして数を増やすことで曲げやすくなり、小径のプーリーであっても巻きつけることが可能になった。取り回しもよくなるので、1本のベルトでも全ての補機類を回すことができるようになったのである。
さて、このVベルトやポリリブベルトだが、エンジンを始動させるたびに回転しているため長期間に渡って使用を続けると磨耗していく。背面の平らな部分が剥離して補機類と接触すると異音を発生させることもある。怖いのは、V字状の谷の部分に亀裂が入ってしまうことで、知らない間に劣化が進んでいることもある。そのため、定期的に点検をしてその状態を確認して交換しておく必要があるのだ。症状として分かりやすいのは異音なので、ベルト回りから、エンジンの回転数に応じて「パパパッ」という擦れ合うような音がしたら劣化の合図。ポリリブベルトの場合は、背面の平らな部分でもウォーターポンプなどの補機類を回しているので、劣化を放置してベルトが切れるようなことがあると走行不能になってしまうので注意したい。
ベルトの張力を最適に保つ
テンショナーやプーリーにも注意
こうしたベルトを油圧やばねによって適正な張力に保つ役割を持つのがベルトテンショナー。高年式ドイツ車の多くは、1本のベルトですべての補機類を駆動させる方式が採用されているため、ベルトを適正な張力に保つオートテンショナーの負担が大きくなっている。
テンショナーが劣化すると適正な張力を保てなくなるので、ベルトが緩み「キュルキュル……」や「ヒュンヒュン……」といった異音が発生するようになる。放置しておけばベルトが切れてしまうことも考えられるので、異音が発生したら早めに修理工場で点検してもらうことが大切だ。
オートテンショナーには、ばねを用いた機械式とダンパーのような油圧式があるが、車種によって使われているものが違う。モデル途中で変更されている場合もあるので、自分でパーツを手配する場合には、どちらのタイプなのかをよく確認しておく必要がある。
プーリーもトラブルの原因になることがある。クランクプーリーのゴムブッシュ部分に亀裂が入ってしまったり、ひどいものだと外れかかってしまうこともある。クルマによっては対策品が出ているが、ガタなどが出ていないかをチェックしておくと安心だ。最近ではアイドラープーリーの劣化も目立っている。ベアリングが焼き付いてロックしてしまったり、樹脂部分が割れてベルトが外れてしまうなどのパターンがある。
また、エンジンからのオイル漏れが原因でベルト回りを傷めてしまうケースもある。例えば、オイルフィルターハウジングガスケットからのオイル漏れは多くのドイツ車で多発しているが、漏れたオイルがベルトやプーリーに付着することによって、その寿命が極端に短くなってしまうことがある。
ベルトやプーリーに使われているゴムは、エンジンオイルのシールに使われるものとはオイルに対する耐久性が異なるというのがその理由だ。足回りのブッシュ類にも同じことが言えるのだが、オイル漏れによる二次的な被害というのはベルト回りにもあるということを認識しておきたい。実例として、オイル漏れによってゴムベルトがぶにょぶにょになり、ベルトが脱落し走行不能になったケースもあるので注意しよう。
ウォーターポンプやオルタネータなど補機類に備わる回転部分のベアリングにガタが出ることもある。これはベルトやテンショナーの不良というよりは、補機類側のトラブルだが、異音として症状に現れることが多いので時々はエンジンから変な音が出ていないかをチェックしておこう。もし、エンジンの回転に比例するような音が出ていたら、ベルトや補機類の不良であることが多い。出先でベルト回りのトラブルが起きると路上ストップの可能性が高いので、レッカーなど余計な出費を避けるためにも早めに対策しておこう。
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