足回りのメンテナンスといえば、ブッシュやショックアブソーバーの交換が基本になりますが、単に交換すれば乗り心地が改善するのではなく、メンテナンスを依頼した修理工場の作業方法も重要なんです。規定のトルクを守ってボルトを締め込むことやタイヤを仮の接地状態にして組み付けを行うなど正しい作業をしないと新品のブッシュに交換してもすぐにダメになってしまうことも。この記事では、足回りのメンテナンスにおける正しい作業とは何なのかについて解説します。
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目次
BMWが持つ絶品の走行フィーリングはメンテナンスしてこそ維持できる
メンテナンスについて解説する前に、BMWのサスペンションについて見ていきたい。ドイツ車が日本車に比べて大きくリードしている部分といえば、走りの良さ。とくに高速安定性においては日本車を大きく引き離しているといえる。ドイツで作られるクルマは年齢、性別、運転歴を問わず、速度無制限区間があるアウトバーンを安全に走行できなければ、商品として成り立たない。それゆえ、ドイツ車の走行安定性が優れているのはある意味当然であり、だからこそ、日本車よりも高い費用を払っても手に入れたいというクルマ好きが多いのである。そしてもうひとつ、ドイツ車ファンの心を捕らえて離さないのは、メーカーごとに目指す走り、乗り味が明確に違っているということ。BMWならBMWらしさ、メルセデスならメルセデスらしさが自らの哲学として貫かれている。もちろん、ポルシェもフォルクスワーゲンもアウディも同じである。
では、BMWが目指す走りとはどんなものなのか。BMWは走りを追求するメーカーであり、セダンでもツーリングでもSAVでも、ボディの大きさ、形状に関わらず、一貫して走る楽しさを追求する。しかも、安全を担保しつつ、BMWが求める走る楽しさをいつの時代も研究し、魅力的なモデルを世に送り出しているのだ。
では、メンテナンスの面から見ていこう。どんなクルマの足回りにもゴムブッシュが使われているが、BMWはアームの配置やゴムブッシュの繊細なチューニングによってBMWらしさを実現している。ゴムブッシュは快適性を保つうえで重要な役割を担っているのだ。そしてもうひとつ、ゴムブッシュの重要な役割がハンドリング。例えば、1つのゴムブッシュの中に異なる特性のゴムを組み合わせたり、形状を工夫することで走行時のアームの動きやすさを調整するなど、ゴムブッシュひとつでフィーリングが大きく変わってしまうほど重要な部品のひとつなのである。
だからこそ、ゴムブッシュやアーム、それに備わるボールジョイントは重要なメンテナンスポイントであり、BMWを選ぶ理由になるであろう走りの楽しさを維持していくためにも欠かせないメンテナンスなのである。
足回りのメンテナンスには専用のツールが必要になる場面がある
BMW・E46やE90、先代型ではF30など旧世代モデルは、足回りが劣化しているクルマが多い。そのためしっかりとメンテナンスしてやることで驚くほど乗り味が変わり、本来のBMWならではの走りを発揮できる。もちろん、比較的新しいモデルであっても、走行距離が増えてくれば足回りが劣化し始める。そういったクルマもゴムブッシュなどが劣化して走行安定性が低下していたり、ひどいものだと足回りから異音が発生している状態になっていることもある。
そんな足回りのメンテナンスで基本となるのがブッシュ類の交換作業。しかしこれには、メーカーやモデルごとに設計された専用のスペシャルツールが必要になる場合が多い。サスペンションアームやハブキャリア、サブフレームなど複雑な形状のケース部分に圧入する必要があるためで、こういったツールなしに作業をしようと思うと、必要以上に分解して交換部分を丸ごと取り外さないといけない場合もある。作業時間が増えるため工賃が割り増しになって、結局ディーラーの方が安かったということもあるのだ。当て金をして叩き出したり叩き込んだり、周囲へダメージが出ることも心配だ。
また一番大切なのがこういった専用ツールを使うことで、ねじれなしにキッチリと組み付けることができるということ。ブッシュによっては専用ツールを使わないと規定のサイズに仕上がらず、アームと干渉してしまうといったトラブルが起きるものもある。こんな時にブッシュを削ってサイズを合わせてしまう工場もあるのが実体だ。整備マニュアルによって専用工具の使用が指定されている部分は、これを使って仕上げてもらいたいものである。
またブッシュを圧入するときに、専用の保護ペーストを塗るように指定されている場合もあって、ここには摩擦による変形を防止するためにもそれを使用することが大切。柔らかく変形しやすいゴム製のブッシュを交換する時には、無理なく優しく入れ替えてやることが必要だ。単に交換すれば乗り心地が復活するというものではなく、その方法も重要なのである。
サスペンションの組み付けで重要なのは1G状態で作業すること
サスペンションを組み付けるときは、当然ながら車体はリフトアップされた状態。サスペンションの組み付けで最も重要なのは、正しいトルクで締め込むことと「1G」状態で作業することである。
力が必要な足回りの整備だけに、緩んだら大変とばかり全力で締め込んでしまうと、ブッシュを必要以上に縮めてしまったり、ボルトに過度の負担がかかったりしてしまう。また次に足回りを整備するときにネジが外れないというケースも多い。マニュアルに指定された規定トルクで、トルクレンチを使って締め込むことが大切だ。
もう1つのポイント「1G」とは何か? これは車体が接地して重力=1Gがかかった状態のこと。実際の作業ではボルトが緩んだサスペンションのままタイヤを組み付けて接地させることは不可能なので、リフトに乗せたままジャッキなどでサスペンションを持ち上げて仮の接地状態を作り上げボルトを締め込む。
これはサスペンションが伸び切った状態で締め込みを行なってしまうと、接地させた時にねじれが生じて常に力がかかった状態になってしまうため。これではせっかくの新品ブッシュも、あっと言う間にねじ切られてしまう。交換後の部品の耐久性を大きく左右するポイントとなる部分でもあるのだ。
ショックアブソーバー交換やブッシュの交換など、サスペンション関係の整備を行なった時には、ジャッキでサスペンションを下から支えた状態で組み付けるのが基本。これをちゃんと守っている修理工場に出すようにしたい。また作業後にはアライメントを調整するのも、忘れられない大切なポイントである。
今回のようなメンテナンスに関する詳しい修理方法はプロに聞くのが一番!
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