メルセデス・ベンツ

ドアミラーの不良などを引き起こす、ハーネス(電線)の劣化について考える

クルマを動かすために必要不可欠な電気。それを各部に伝えるのがハーネス(電線)の役割ですが、これが長年の使用により劣化してしまうとトラブルの原因になってしまいます。ドアミラーの開閉不良などが代表的な例。ここではそれらを直すためのメソッドを紹介します。

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目次

現在、クルマ一台に使用される電線は約1000本、全部を一本に繋ぎ合わせると、全長は3kmにもなると言われている。途方もなく複雑な配線がされているわけだが、大きく分けると動力源となる電気を配電する動力線と、センサーなどの制御電流を流す線に分類することができる。
動力線は大きな容量の電気を流すため太くなっているのが特長で、ラジエターの電動クーリングファンやワイパーモーターなどの線が代表的な例。一方の制御系は、信号的な低容量の電流を流すだけなので頼りないほど細いものが多いが、一カ所断線してしまっただけでクルマの調子がおかしくなってしまうほど重要な役割を担っている。
電子制御化が進む現在のクルマでは、各部が複雑に関連するためセンサー情報などを相互に交換する必要があり、その膨大なデータをデジタル化して少ない電線で伝達することを可能にしたのが、コントロール・エリア・ネットワーク(CAN)システム。1990年代中頃から多くのドイツ車に採用され、現代の自動車においては欠かせないシステムとなっている。

劣化した部分のみを補修する
リペアサービスを利用すると安く直せる

ハーネスの不良と思われるトラブルはいろいろとある。代表的なもので言えば、ドアミラー、パワーウインドー、スロットルアクチュエータなど。ドアミラーは格納操作を頻繁に行なうことで、内部のハーネスが断線してしまうことが多い。格納機能が付いているのに使うと壊れるというのはおかしな話だが、ハーネスの取り回しに余裕がないことと、経年劣化でハーネスの被膜がボロボロになってしまうというのが根本的な原因だ。ディーラーでは部品をまるごと換えるASSY交換が基本であり、部品代だけで約10万円以上。だが、この劣化部分のみを耐久性の高いハーネスに交換するリペアならリーズナブルに直すことができる。モーターなどが壊れていないことが前提になるが、ハーネスの交換だけなら約1万円だ。試してみる価値は非常に高い。自分でドアミラーを外せる人なら、内部を点検してハーネスを補修することも可能だ。
スロットルアクチュエータは電動のスロットルバルブのことで、アクセル開度を信号化してスロットルバタフライを電気モーターで作動させている。これが壊れるとエンジン不調や警告灯の点灯などの症状が出ることが多い。トラブルの原因として考えられるのがこれに備わるハーネスで、熱や経年劣化により被膜が剥がれてしまったり、断線してしまうことがある。基板にクラックが入っているときはハンダを盛り直してやる必要があるが、ハーネスの不良なら補修することで復活するケースが多い。ドアミラーのようにDIYで簡単に外せる部品ではないので、DIYメンテナンスに慣れていない人であればリペアサービスを活用するのがベストだろう。スロットルアクチュエータは高価な部品で、例えばメルセデス・ベンツなら約17万円、V12エンジンには約27万円のスロットルアクチュエータが2つ付いているが、リペアなら一つ約8万円で直せる。
パワーウインドーのトラブルというとレギューレータかモーターの不良を疑ってしまうが、電気的な原因で作動しなくなることもある。パワーウインドーのハーネスはドアヒンジ部分で断線してしまうことがあり、クルマをいじったことがある人ならDIYでも補修できるレベル。内張りを外す必要はあるが、レギュレータの交換に比べれば作業は簡単だ。もちろん、トラブルの原因がハーネスであることを特定しなければならないので、電圧テスターなどを使って事前にチェックする必要がある。
クラシック世代のクルマでは、ハーネスの一部というより全体的な劣化が考えられる。電気というのは繋がっているものだから、一部を補修したところで復活しないケースもある。レストア作業を得意とする修理工場では、クルマの電気系統を徹底的に見直して現代でも通用するようなレイアウトに変更することがある。ヒューズやリレーの追加とともに、ハーネスもゼロから引き直す。30年以上も前のハーネスの一部を補修したところで、また他の部分がダメになってしまうことが多いからである。クラシック世代のドイツ車を現代の環境に合わせて快適に走らせるためにも、ハーネスの引き直しというのは非常に重要なメンテナンスなのである。

今回のようなメンテナンスに関する詳しい修理方法はプロに聞くのが一番!

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コネクター部分に備わる細い配線は劣化しやすく断線してしまうことがある。目視で確認できるところは定期的にチェックしておきたい。
パワーウインドーの配線はドアのヒンジ部分にあり負担がかかりやすい。原因が特定できればDIYで補修することもできる。

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