メルセデス・ベンツ

クルマの頭脳であるコンピュータのメンテナンス

新車から20年くらい経過すると思わぬトラブルが発生することがあります。そのひとつがコンピュータの不良。これはクルマの頭脳と言うべき重要部品ですが、この記事ではトラブル事例やリーズナブルな直し方を紹介します。

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目次

電気的な配線をほとんど持たず、機械式の燃料噴射システムによってクルマを動かしていた時代から、高度な電子制御を用いた方式へと進化している現代のクルマ。各部にセンサーを取り付けて、そこからの信号をコンピュータが受け取り、燃料噴射から点火のタイミングなどを統括的に制御している。横滑り防止装置などの安全装備も、ABSセンサーや横Gセンサーなどからの情報を元にコンピュータが制御し、安全な走行を実現している。現代のクルマにとって、コンピュータはクルマの頭脳というべき部分なのである。
新車から約20年落ちとなるドイツ車は電子制御の過渡期に当たり、その役割によって複数のコンピュータを搭載するクルマもある。例えば、メルセデス・ベンツW124やW140などでは、燃料の噴射タイミングなどを制御するLHコントロールユニット、電動スロットルアクチュエータをコントロールするE‐GASユニット、横滑り防止の制御システムであるASRユニット、ASRが装着されないクルマに搭載された、E‐GASと同様の役割を持つT/LLRユニットなど。
これらはエンジンルームなどに配置され、コンピュータボックスにまとめて搭載されているクルマもある。
この時代のドイツ車は、これらのコンピュータにトラブルが発生し、エンジン不調などを引き起こすケースが増えている。アイドリングが不安定だったり、エンジンストールしたり、エンジンが始動できなかったりと非常にやっかいな症状を引き起こす。電子部品なので突然ダメになることがあり、出先でトラブルが起きると走行不能に陥ることもある。
原因として考えられるのは2つ。まずはコンピュータ内部にある基板のハンダにクラックが入ってしまったり、電解コンデンサがパンクしてしまうという、コンピュータ本体の不良。電解コンデンサは有効寿命がある部品で、その寿命は温度(熱)によって左右される。さらに新車から約20年落ちとなるドイツ車は現代のクルマに比べてコンデンサ容量のマージンが少ないものもある。ハンダにクラックが入ってしまうのも熱や経年劣化が原因であり、いつかは寿命がやってくる部品なのである。
ただし、クルマの状態、乗り方によってその寿命は変わってくる。例えば、エンジンが異常燃焼を起こして周辺の温度が上昇すれば、エンジンだけでなくコンピュータへの負担も大きくなる。設計された最適な温度で使用しなければならないのはエンジンだけではないのだ。熱によってゴムシールや樹脂パーツの劣化が速くなるように、コンピュータ内部の電解コンデンサなどの寿命も短くなってしまうのである。
コンピュータが壊れるもう一つの原因として考えられるのがエンジンハーネスの劣化。各部に備わるコントロールユニットからの情報を伝達するハーネスなのだが、被膜がボロボロになり配線がショートしてしまうことがある。これにより、コンピュータまで壊してしまうのである。コンピュータ本体が寿命を迎えることよりも、ハーネスの不良によるトラブルのほうが圧倒的に多いので定期的なチェックと交換が重要だ。

コンピュータ内部の基板に備わる電解コンデンサは有効寿命がある部品。トラブルの原因になりやすく、部分修理をする際には交換されることが多い。
コンピュータ本体に問題はなくても、エンジンハーネスの劣化によりコンピュータを壊してしまうことがある。注意したいポイントだ。

コンピュータ内部を部分修理してくれる
業者が増えてきている

このようにトラブルが起きるとやっかいなコンピュータだが、いざ交換するとなると10~30万円と非常に高価。メルセデスのAMGはノーマルに比べても高く、クルマによっては100万円以上するコンピュータもある。
でも、ここでドイツ車に乗り続けるのを諦めないでほしい。近年、こうしたコンピュータを分解修理してくれる業者が増えてきているのだ。コンピュータ内部を入念に点検して、寿命を迎えた電解コンデンサやハンダのクラックを修理してくれるのである。費用的にも約10万円とリーズナブル。コンピュータの劣化状況によって変わってくるが、AMGなどのスペシャルモデルの場合でも直してくれるところもある。
新車から約20年落ちとなるドイツ車の中には、中古品を使うことができるクルマもあるのでそれを使うのがもっとも安く済ませる方法だが、前述したように電解コンデンサは有効寿命がある部品であり、同じような環境で使われてきたコンピュータはトラブルが再発するリスクが高い。出先でトラブルが起きた際の予備として車内に積んでおくことは有効な手段だが、長く乗ると決めたクルマならきっちりと直しておきたいところ。
この時代のドイツ車は年式的に見てもコンピュータの不具合が起きる可能性が高いので、予防整備としてリビルト品のコンピュータに交換して、元々付いていたコンピュータを予備として持っておくのが、もっとも安心な方法だと言えるだろう。もちろん、コンピュータを交換するときにはエンジンハーネスの状態にも気を配っておかないと、内部を修理したリビルトパーツでも壊してしまうことがあるので注意しよう。
また、コンピュータボックスにゴムシールが付いているクルマは、この部分のメンテナンスも忘れずに行っておきたい。シールが劣化していると水が浸入してコンピュータを壊してしまうことがある。エンジン回りのトータルメンテはコンピュータを長持ちさせる重要なポイントなのだ。

今回のようなメンテナンスに関する詳しい修理方法はプロに聞くのが一番!

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