近年の輸入車においては「診断コンピュータ」を使った点検と整備が主流になっています。これは車検やメンテナンスで修理工場にクルマを持ち込みメカニックやフロントマンと話していると必ずと言っていいほど出てくるワードでもあります。この記事では、ユーザーが知っておきたいコンピュータ診断の基本的なことについて解説します。
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昔に比べてメンテナンスの手法は大きく変わってきている
昔から整備の現場では「故障の原因が分かれば、修理は終わったようなもの」と言われてきた。何が原因で調子を崩しているのか、それを探るのに職人の経験と勘が重要で、下手な修理工場に出すと見当違いな部分を交換して、当然ながら直らず、トラブルになるようなケースもあったものだ。
しかし現代では、高度なコンピュータ技術によって故障診断は合理的で確実なものに進化した。故障診断システムはもちろんのこと、ショックアブソーバーやバッテリーといった一見劣化の分かりにくい部品も、状態を数値によって示すことが可能な診断機が導入され、メンテナンスの現場は大きく変わってきている。
最適な量のガソリンを噴射したり、ちょうどいいタイミングで点火スパークを飛ばしたり、クルマを快調に走らせるために必要な仕事はとてもたくさんある。
クラシックな世代のクルマはこれらをすべて機械仕掛けでこなしていたが、やはり限界があった。高性能と効率化、環境適合性に対する答えとして採用されたのが、数々の電子制御技術だ。クルマ側がコンピュータ化されれば、目視で点検するわけにはいかない。いったいどんな状態になっているのか、調子が悪くなっている原因はどこなのか、データを読み出すための手段が必要になる。これが「コンピュータ診断機」の基本的な役割である。
以前は各センサーからの情報を読み取る程度だった診断コンピュータも、現在では故障箇所のメモリを呼び出したり、車両側の設定を変更したり、コントロールユニットのソフトウェアをバージョンアップしたりと、どんどん電子化される自動車に対応して進化を重ねている。メカニックと車両を繋ぐインターフェースとして、メンテナンスだけでなく実際の修理作業においても欠かせないものとなっているのだ。この診断機をクルマの制御部分に接続すると、各ユニットとのコミュニケーションが始まり、その状態をすぐに確認できる。電子制御を駆使した高年式モデルにおいては、もはや診断機がないと整備できないクルマなのである。
診断機を使いこなせるメカニックが在籍しているかが工場選びのキモ
では、具体的にこの診断機で何ができるのかというと、定期点検や車検で入庫したクルマに対して、まず実施する最初のチェック「ショートテスト」である。修理工場でコンピュータ診断を受けた時に、チェックシートを見たことがある人はいると思うが、車両側の各ユニットとの通信を行なうと、問題がある場合は該当部分にフォルトコードが表示される。もうひとつ診断コンピュータが持つ大きな機能に、実測値の表示がある。コンピュータを接続してエンジンを始動することで、車両のセンサー類が拾っているあらゆるデータをリアルタイムで表示することが可能なのだ。水温や油温からエアコンの作動状況まで、あらゆるデータを画面でチェックすることができる。まさにクルマの状態が手に取るように分かる。
また実測値の変化を使って故障診断をすることもできる。機能部分を動かしてみて、数値が正しく変化しないのであればセンサーの不良と分かるという具合。例えば、パワーシートの状態を数値化して表示することだってできるのである。
同様にステアリングの舵角の実測値も細かく表示され、ステアリングを切っても数値に変化がなければセンサー不良が疑わしいといったように、診断機からの情報をヒントにトラブルを特定しやすくなっているのが分かる。エアコンはエバポレータの温度まで把握できるから、今までは何となく冷えないと思っていたエアコンの不調でも、コンプレッサーの出力も含めてチェックできるのである。
こうして見ていくと、高年式の輸入車のメンテナンスにおいてコンピュータ診断機がいかに重要なのかがよく分かる。ただし、注意しなければならないのはコンピュータ診断機はひとつのヒントであって、故障コードが出ていた部分が必ずしも不具合の原因とは限らない。ABSの警告灯が点いて診断機でチェックした時、センサー不良と出たとする。でも実際はABSユニットの不良が原因ということも。燃料が濃いという症状が出た時にもセンサーが悪いのか、インジェクタに問題があるのかなど診断機の故障コードだけではなく、経験と想像力が現代の整備に求められているのだ。
ユーザーにとっては修理工場を選ぶ際に、各メーカーに対応したコンピュータ診断機を完備しているか、それを使いこなせるメカニックがいるかが、現代の修理工場選びのポイントになっている。
今回のようなメンテナンスに関する詳しい修理方法はプロに聞くのが一番!
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