クルマにはハーネスと呼ばれる電線が数多く使われていますが、その劣化が原因でトラブルが発生することがあります。代表的なのが、ドアミラーの開閉不良。閉じたまま戻せなくなったり、逆に閉じたくても閉じられなくなってしまうことも。とくに新車から10年以上が経過したA3、A4、A6などの旧世代モデルでは注意が必要です。この記事では、トラブルの原因と対処法について紹介します。
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目次
ハーネス1本の劣化でもトラブルの原因になる!
現在、クルマ一台に使用される電線は約1000本、全部を一本に繋ぎ合わせると、全長は3kmにもなると言われている。途方もなく複雑な配線がされているわけだが、大きく分けると動力源となる電気を配電する動力線と、センサーなどの制御電流を流す線に分類することができる。
動力線は大きな容量の電気を流すため太くなっているのが特長で、ラジエターの電動クーリングファンやワイパーモーターなどの線が代表的な例。一方の制御系は、信号的な低容量の電流を流すだけなので頼りないほど細いものが多いが、一カ所断線してしまっただけでクルマの調子がおかしくなってしまうほど重要な役割を担っている。
電子制御化が進む現在のクルマでは、各部が複雑に関連するためセンサー情報などを相互に交換する必要があり、その膨大なデータをデジタル化して少ない電線で伝達することを可能にしたのが、コントロール・エリア・ネットワーク(CAN)システム。1990年代中頃から多くのドイツ車に採用され、現代の自動車においては欠かせないシステムとなっている。
劣化した部分のみを補修する
リペアサービスを利用すると安く直せる
ハーネスの不良と思われるトラブルはいろいろとある。代表的なもので言えば、ドアミラーやパワーウインドーなど。まずは、ドアミラーの不良から見ていこう。ドアミラーが畳めなくなったり、角度調整ができないなどの作動不良は、今や現行モデルでも発生するほど年式を問わず頻発しているトラブルだ。ドアミラーを畳まなければいいのかもしれないが、それでも開閉できないと不便に感じる場面はある。
対処方法としては交換と修理があり、ディーラーなどでは部品ごとまるごと換えるASSY交換となるケースが多い。しかもその費用は10万円以上と痛い出費になるが、内部修理をすることでリーズナブルに直せるのだ。
ドアミラートラブルの大きな原因になっているのが、コントロールハーネスの劣化によるショート。専門のリペア業者では、ドアミラーを分解して劣化したハーネス部分のみを交換。ここは純正よりも強化されたハーネスを使用することで、トラブルが再発しないよう工夫してくれるところもある。また、スイッチやコントロールユニットの不良もあるが、被膜が剥き出しになったハーネスがショートしてこれらを壊してしまうケースが多いようだ。それだけにドアミラーに異常が発生したまま放置すると費用がかさんでしまうこともある。
さらにリンケージ部分が破損している場合はこれを新品交換。その後各部の洗浄やグリースアップ、テストなどを経て完成というわけだ。高年式モデルでは、リンケージ部分が強化されており破損しにくくなっているものの、ミラー自体に大きな衝撃が加わるとモーターへのダメージが大きくなっているという。このモーターもカシメ式になり以前よりも分解が困難になっている。以前に比べて高年式モデルのハーネス被膜は丈夫になっているのだが、内部のハーネスは弱くなっているという。また、クルマによってはミラーが立ち上がるように格納されるものがあるが、それもトラブルが多く発生している。
基本は現品修理となるので、クルマからドアミラーを外して業者に郵送する必要がある。なじみの修理工場を通じて依頼するのがもっとも簡単な方法。また、業者によってはコントロールハーネス、リンケージ、ゴムパッキンなどを完全再生させたリビルト品もリリースしている。コアとの引き換えになるので、装着されているミラーを郵送する必要があるが、新品同然の仕上がりだ。リペア費用は車種やコンディションによって若干の違いはあるが、リーズナブルに直すことが可能。
パワーウインドーのトラブルというとレギューレータかモーターの不良を疑ってしまうが、電気的な原因で作動しなくなることもある。パワーウインドーのハーネスはドアヒンジ部分で断線してしまうことがあり、クルマをいじったことがある人ならDIYでも補修できるレベル。内張りを外す必要はあるが、レギュレータの交換に比べれば作業は簡単だ。もちろん、トラブルの原因がハーネスであることを特定しなければならないので、電圧テスターなどを使って事前にチェックする必要がある。
クラシック世代のクルマでは、ハーネスの一部というより全体的な劣化が考えられる。電気というのは繋がっているものだから、一部を補修したところで復活しないケースもある。レストア作業を得意とする修理工場では、クルマの電気系統を徹底的に見直して現代でも通用するようなレイアウトに変更することがある。ヒューズやリレーの追加とともに、ハーネスもゼロから引き直す。30年以上も前のハーネスの一部を補修したところで、また他の部分がダメになってしまうことが多いからである。クラシック世代のドイツ車を現代の環境に合わせて快適に走らせるためにも、ハーネスの引き直しというのは非常に重要なメンテナンスなのである。
今回のようなメンテナンスに関する詳しい修理方法はプロに聞くのが一番!
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