問診・試乗・診断機 最初の見極めが大事
初めてATが市販車に搭載されてから70年以上。ATは機械式から電子制御になり、CVTやDCTが登場するなど長足の進歩を遂げたが、どれにしてもトラブルの発生する基本的な理由に大きな差はない。ATにはMTのクラッチと同様の摩擦材を使用した部品が数多くあり、それらが消耗すると変速不良が起こるのだ。また、摩耗だけでなく一部が剥離して変速不良になるケースもあり、さらにはその剥離した破片がATFに混ざり油圧経路を塞いでしまうことも。これはもう構造上の問題で、摩擦材を削りながら変速しているようなものゆえ、ATは遅かれ早かれオーバーホールしなければならない機械なのである。
と、大袈裟にいってはいるが、ATが不調だからといって必ずしもフルオーバーホールしなければならないわけではない。前述のようなことになってしまえばもちろん必須だが、ATには多くの補器があり、それらのトラブルもまた変速不良を引き起こす可能性があるのだ。メルセデスの5速ATでよくあるコンダクタープレートの不良などがよい例だろう。あるいはバルブボディのオーバーホールだけで直るようなケースもある。そのあたりの見極めが難しいのがAT修理の難点であり、説明を受けても素人には分かりづらいところだ。
達人はATFの色を見ただけで原因が分かる! などとまことしやかに言われるが、同社では問診、同乗、試乗の後にコンピュータ診断と直接の点検にたっぷり時間をかけて原因を特定する。何でそんなことをするかというと、誤った診断で不要な修理をしないため。つまり、少しでもオーナーの出費を減らすためである。実際、他の工場でATの分解を勧められたクルマをよくよく調べてみたら、コンピュータの再セッティングだけで完治したという例もあるとか。
前段階に時間をかけられるのは、その後の作業が速いから。同社のスタッフは一日一基のATをオーバーホールするという。他ではあまりしないトルクコンバータのリビルドまで行ない、倉庫にはリビルド済みのAT/CVTが2000基以上も陳列されている。そんなATのプロフェッショナル集団ですら気を遣うのが最初の診断であり、そこをしっかりとしているからこそ、他の整備工場からの依頼がひっきりなしなほど同社は信頼されているのだろう。昨今の輸入車はコンピュータ診断機でのテストやセッティングが不可欠なため、車両ごとの入庫が必要となるが、来るべきATの不調に備え、ATサービス東北・丸福自動車の名は覚えておいて損はないはずだ。